2026年1月に西宮北口 林田ブレストクリニックが西宮北口に新規開院

乳房痛の多くは女性ホルモンによるものです。女性ホルモンで生じる諸症状を乳腺症といい乳房痛もその一つです。乳腺症は女性ホルモンによる生理的な変化であって病気ではありません。

乳房の諸症状

① 乳房痛

乳房痛と乳癌

乳房が痛むと不安になる人は多いと思います。しかし女性の乳腺は女性ホルモンの作用で痛むようにできており、乳房痛の大半はそうした痛みです。

実際、乳房痛で来院される方は多いのですがその中で、乳癌が見つかることは1%ほどしかありません。癌の症状として痛みは典型的なものではありませんので、しこりを伴うものでなければあまり心配はいりません。

ただ乳がん検診において乳癌発見率が0.3%ほどであることを考えると、痛みのある集団の方がわずかに乳癌が多いのかもしれません。気になる方は乳腺外来を受診してください。保険を使って診療することができます。

乳房痛の主な原因

①-1 乳腺症

乳房痛の多くは女性ホルモンによるものです。女性ホルモンで生じる諸症状を乳腺症といい乳房痛もその一つです。乳腺症は女性ホルモンによる生理的な変化であって病気ではありません。

乳房の痛みが月経周期に合わせて痛む場合は乳腺症の可能性が高いです。閉経後でも女性ホルモンは少ないながらも作られていますので、そうした女性ホルモンに反応して乳房が痛むこともあります。ホルモン補充療法で痛みが出ることもあります。(⇒ 乳腺症)

①-2 乳腺炎

乳腺炎は、乳管内の細菌感染で生じる炎症です。化膿して赤くなり痛みや熱が出ますので見ただけで判断できます。乳腺炎の診断と治療についてはそちらのページをご参照ください。稀に炎症性乳癌といって炎症のように皮膚が赤くなる乳癌がありますが、この場合は熱や痛みなどの自覚症状に乏しいのが特徴です。気になるときは来院して検査を受けましょう。

①-3 嚢胞

嚢胞は、乳腺の中にできる水のたまった袋です。これも女性ホルモンで生じるもので乳腺症の症状の一つです。通常痛むことはありませんが、ホルモンの影響で水が増えて緊満すると痛むことがあります。 
→嚢胞

①-4 帯状疱疹の発症前の痛み

帯状疱疹は発症の数日前に痛みだけが出ることもあり、乳房痛として来院されることがあります。発疹が出てきて診断が確定したら皮膚科を紹介しています。

①-5 打撲による血腫

乳房を打撲して中に血腫ができると乳癌に似たしこりを作ることがあります。診察時に痛みがあり紫斑を伴うことから見当がつきます。1ヶ月ほどで消失します。

①-6 血栓性静脈炎(モンドール病)

皮下の静脈が詰まって、線状の硬い筋ができて突っ張り、痛みを伴う現象です。無害です。3ヶ月くらいで消失します。

①-7 乳房痛と紛らわしい痛み

乳房痛のように思えて、実は胸壁側や内臓の痛みということもあります。これらの痛みは、乳腺を引き出して圧迫を加えることで、痛みが乳腺側にあるのか、胸壁側なのか確認することで判断できます。

  • 肋軟骨炎、肋骨骨折、肋間神経痛
  • 肋間筋や大胸筋の筋肉痛
  • 心臓、肺、その他の内臓からくる痛み

② 乳房のしこり

乳房にしこりがあるときは、まず乳腺外来を受診しましょう。
あれこれ悩む前にまず乳腺外来を受診しましょう。しこりといっても良性のことが多いので、まずは検査を受けて安心いていただければと思います。

乳房のしこりについて
「しこり」は腫瘍とは限りません。腫瘍ではないものも含んでいます。しこりで受診される方の中でも、単に乳腺の硬いところや、乳腺表面の凹凸を触れているケースが多いと思います。

乳腺は変形しやすい組織ですが、つまむとコリコリしていてしこりと間違いやすいのです。触診の際はつまんだり、つかんだりするのでなく4本の指の腹で乳腺を広げるように触れるのがコツです。乳腺を広げるように触れ、胸壁と指の間にあるしこりを感じるようにします。

しこりを大きく3つに分けて考えると理解しやすいかもしれません。

乳房のしこり
① 腫瘍ではないもの
単なる乳腺の塊
乳腺症(痛みを伴うものが多い)
のう胞(緊満すると硬く触れ、痛むことあり)
乳腺炎(炎症による疼く痛み、発赤)

② 良性の腫瘍
線維腺腫(無痛、可動性良好)
良性葉状腫瘍(無痛、可動性良好)     
乳管内乳頭腫(無痛、乳頭分泌物)

③ 悪性の腫瘍
乳癌(無痛、ゴツゴツ、可動性不良)
悪性葉状腫瘍 稀
悪性リンパ腫 稀

腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍がありますが、どちらも痛みを伴うことは少ないです。ただし乳癌で痛みを伴うこともありますので、痛いから大丈夫と判断するのは危険です。乳腺外来を受診してください。

総じて良性の腫瘍はよく動きます。押さえると乳腺の中を逃げるように感じますが、乳癌は周囲の組織に浸潤していくので動きが悪いと感じます。

典型的な乳癌のしこりは、硬く、いびつな形で、ごつごつした感じに触ます。ただし、そうとは限らないしこりも多く、触知しない乳癌もあるので注意が必要です。

しこりがいつからあったかも問題です。最近まではなかったところにしこりができたというなら要注意です。その変化を感じるためにも、定期的なセルフチェックは必要です。

乳頭から分泌物がある、鏡の前で腕を上げたとき、しこりの近くにエクボができる、などは乳癌の可能性があります。なるべく早く乳腺外来を受診しましょう。

③ 腋窩のしこり

腋の下の窪みを腋窩といいます。腋窩にはリンパ節や乳腺組織の一部(副乳)があります。

腋窩のしこり
① 皮膚と一緒に動く→粉瘤などの皮膚病編
② 皮膚のすぐ裏にあるもの→副乳
③ 深部にあるもの→リンパ節 
  
リンパ節を触れる場合
① 正常のリンパ節がもともと大きい人もいる
アトピー性皮膚炎や関節リウマチの人に多い
② リンパ節が腫れて痛む、熱がある
ほとんどが炎症(細菌、ウィルス、ワクチン接種後)
③ 腫れているけど痛みがない
ある種のウィルス感染の初期、結核など
癌の転移、悪性リンパ腫など
稀に腋窩に発生する乳癌もある
③-1 腋窩リンパ節

腋窩リンパ節はやや深いところにあります。触診するときは親指を大胸筋の上におき、4本の指を窪みの奥に入れて指先に触れるリンパ節を探します。

リンパ節は体内に入った細菌やウィルスを捕まえる所で、そういうときは炎症を起こして腫れ、熱や痛みを伴うことが多いです。

一方、癌の転移や悪性リンパ腫による腫れは、熱や痛みを伴いません。稀には腋窩の乳腺に発生する乳癌もありますが、このときも熱や痛みを伴いません。

しこりを触れたら乳腺外来を受診しましょう。時間とともに大きくなる場合は早く受診しましょう。多くは超音波検査と細胞診で見当がつきます。細胞診は普通の採血用の針で行います。

リンパ節が炎症で腫れるときはたいてい痛みや熱を伴いますが、結核や膠原病で腫れる場合は痛みに乏しく熱も微熱にとどまります。アトピーや関節リウマチの人は、もともとリンパ節が大きくやわらいことが多いです。正常のリンパ節なので痛みはありません。

③-2 副乳(副乳腺)

副乳は皮膚の裏の比較的浅い所にあり、境界のはっきりしない、こりこりした組織として触れます。女性の10人~20人に1人は、腋窩に副乳を持っています。つまむと少し痛みがあり、月経周期に合わせて腫れる人もいます。授乳時に腫れて痛んだ経験のある人もいると思います。

④ 乳房皮膚のくぼみ・ひきつれ

乳癌の中には周囲の組織を巻き込んで腫瘍に引き込もうするものがあります。こうした癌では表面の皮膚が引っ張られてエクボのような窪みができたりします。進行すると乳房全体が変形することもあります。まずは乳腺外来を受診し、乳癌になっていないか確認しましょう。

乳房をつまんだときにえくぼが出るのがdimpling、つままなくてもくぼみが出ているのをdelleと呼びます。
乳頭直下にできる乳癌の場合は、乳頭が引き込まれて乳頭陥凹を生じることがあります。乳頭陥凹は乳癌を疑う所見です。
乳頭陥凹と陥没乳頭の違い
一方、陥没乳頭というのは、先天的にあるいは慢性的な変化により、徐々に乳頭先端が引き込まれるものであり、多くはつまみ出して整復することができます。呼び方は似ていますが乳癌とは関係ありません。英語の方が違いを上手く表現しています。

⑤ 乳房皮膚の発赤

乳房の発赤は、炎症に伴うことが多いのですが、乳癌のこともあります。炎症の場合は熱や痛みがあったり、痒かったりしますが、乳癌の場合は症状に乏しいことが多いです。乳癌になっていないか調べる必要があります。

⑥ 乳輪・乳頭の症状

乳輪・乳頭にはよく痒みがでます。無意識のうちに掻いたりすると、ただれてさらに痒くなり、悪循環となって乳輪炎や乳頭炎になることがあります。ただれからにじむ体液は滲出液と表現し、後述の乳糖分泌物とは区別します。

一方、乳頭の先端部にできる円形の境界明瞭なただれは、パジェット病という特殊な乳癌の可能性があります。パジェット病の場合は痒みなどの症状に乏しいのが特徴です。→パジェット病

また乳頭先端部には乳頭部腺腫という良性の腫瘍ができることがあります。腫瘍の先端部が半球形に露出してそこだけがただれてパジェット病の様に見えることもあります。この場合も痒みなどの症状は乏しいです。

⑦ 乳頭からの分泌物

乳腺は、授乳期以外でも少量の分泌をおこなっており、その分泌には女性ホルモンも関与しています。診断には分泌物の性状だけでなく、分布も重要になります。

⑦-1 両側の複数の乳管から出る場合

両側多孔性といい、多くは乳腺症です。色は乳管ごとに違うのが普通で白色、黄色、黄緑色、無色透明や混濁などまちまちですが、女性ホルモンによる生理的な現象であり、まず問題はありません。

両側多孔性でも一カ所だけ性状が違って黒色や褐色、あるいは血性の場合や、他の乳管よりも明らかに量が多いときは注意が必要です。

薬の副作用で両側多孔性に乳汁様の分泌物が出ることもあります。下垂体ホルモンに異常がある場合もありますので血中のプロラクチン濃度など測定します。

⑦-2 片側の特定の乳管から出る場合

片側単孔性といいますが、よく調べると多孔性のこともあります。本当に単孔性であれば、その乳管の領域に病変が潜んでいる可能性があります。

乳腺症の可能性もありますが、乳管内乳頭腫か早期乳癌の可能性が高くなります。分泌物中のCEAが高いときや、黒色や褐色、血性分泌の場合はより可能性が高くなります。検査の進め方や治療法については乳管内乳頭腫の項で説明しています。