§6 要精密検査となった方へ
目次
1 要精密検査(要精査)で乳癌の確率
2 問診
3 視触診
4 マンモグラフィと超音波検査
5 細胞診
6 針生検(CNB)
7 吸引式針生検(VAB)
8 切開生検
9 生検後の経過観察
1 要精密検査で乳癌の確率は?
健常な一般女性1000人が乳癌検診を受けて、要精密検査となるのは約50人で、そのうち乳癌と診断されるのは約3人です
「要精密検査=乳癌」とは限りません。慌てず、焦らず、精密検査にいらしてください。異常がないとわかってほっとしていただけることの方が圧倒的に多いのです。受診が怖い、乳癌と言われるのがこわい、症状がないからとそのままになっているのはよくありません。乳癌は早期発見が大切です。ご自身のため、ご家族のため、頑張って受診してください。
2 問診
現在の症状、既往歴、家族歴、薬歴、アレルギーの有無、妊娠や出産、嗜好品などについてお尋ねします。お薬手帳、紹介状や画像データなどがある方は御持参下さい。
3 視触診
しこりや痛み、乳頭分泌の有無、乳輪・乳頭の状態、皮膚のくぼみなどを確認します。
腋窩や乳房の上部、下部にはマンモグラフィの撮影範囲に入らない場所ができますので、そいう場所は入念にチェックします。
4 マンモグラフィと超音波検査
マンモグラフィは乳房を圧迫して撮るレントゲン写真です。超音波検査はジェルを塗ってプローべを当て、乳房内部を観察する検査です。精密検査ではマンモグラフィと超音波検査の両方を行い、総合的に判断します。
マンモグラフィは多くの場合撮り直します。どうしても撮りたくない人は相談に応じますが、撮り直して影が消えるケースも多く、それだけで異常なしと判断できる場合もありますので、ご理解頂ければと思います。
それぞれの特性ですが、超音波検査は小さなしこりを見つけるのが得意で、マンモグラフィは石灰化を見つけるのが得意です。石灰化とは、マンモグラフィに写るカルシウムの粒で、まばらななものや粗大なもの、左右の乳房で対称的に診られるものは多くが良性です。一カ所に高密度でみられるものや粒の形が悪いものは悪性の可能性があります。
画像検査で良悪性の判断が困難な場合や、乳癌を疑う場合は、次に述べる細胞診や組織検査に進みます。
超音波で見える病変は、プローべを左手で持って病変を映しながら右手の針で穿刺して細胞や組織を採ります。
しかし石灰化は超音波に映らない病変が多く、超音波画像を見ながら組織を採ることができません。石灰化で組織検査が必要な場合はステレオマンモトームという装置が必要で、この装置がある病院に依頼します。
なお、超音波に写らない石灰化だけの病変は大半が良性であり、仮に悪性であっても非常に早い段階で、まだリスクも生じていないことが多いので、すぐに組織採取に進まず、しばらく経過観察することもあります。見極めて良性と判断できれば不要な組織検査を回避できます。
5 細胞診
採血の針と注射器で行う簡便な検査です。超音波で病変を観察しながら穿刺し、吸引して細胞を採取します。採血に使う普通の針ですから穿刺するときにチクッとするだけで、局所麻酔は要りません。通常の採血同様、帰宅後は普通に入浴できます。
細胞診は組織を採る検査ではなく、組織を構成する細胞がばらばらになって採れてきます。それらの細胞から元の組織型はどうかを推測する検査です。


組織検査ほど精度は高くありませんが、簡便で気になる所をちょっと調べるのに役立ちます。結果がでるまで1~2週間かかります。ただし細胞診では確定診断にならないので、必要があれば組織検査に進みます。
細胞診と生検の違い
「生検」というのは組織を取る検査のことを指します。細胞診は生検にはなりません。次に説明する針生検からあとの項目が「生検」になります。
6 針生検(CNB:core needle biopsy)
局所麻酔をして専用の針で組織を採取します。当院は麻酔をするときも超音波を見ながら少しずつ丁寧に入れて行きます。時間をかけてしっかり局所麻酔をするので、ひどく痛むことはありません。十分に麻酔が行き渡ったら、超音波を見ながら針を進め、狙いをつけてボタンを押すと針が飛び出して一瞬のうちに組織が採取できます。通常3回穿刺して3本の組織を採取します。


組織を採取したあとは、止血のために少し圧迫し、防水のシールを貼って帰っていただきます。防水なので全身のシャワーや洗髪は普通に行えます。シールを湯船につけなければ入浴も可能です。シールは24時間後にご自身で剥がしていただき、通常入浴可能となります。
7 吸引式針生検(VAB:vaccume assisted biopsy)
針生検では診断がつかないとき、より多くの組織を採るための装置です。診断困難が予想されるときは最初から使用することもあります。

針生検よりも太い針を使うので、麻酔を多く、しっかり入れます。本体は電動で、吸引をかけながら組織をカットするのでより多くの組織が採れます。一回穿刺したら針を抜かず、連続して何回も採取できます。採取した組織は負圧で吸引されて本体内に溜まるので、検査後に取り出して病理検査に提出します。針の太さは選べるようになっていますが、当院では14Gの一番細い針を使っています。細いといっても外径は2.6mm(実測)あります。
検査後は長めに圧迫します。そのあと防水のシールをはり、その上から圧迫用のガーゼをテープで固定して、その状態で帰っていただきます。数時間後に圧迫用のガーゼとテープをご自身で剥がしていただき、シャワー可能となります。24時間経過したら防水のシールはがして通常入浴可能となります。結果が帰ってくるまで1〜2週間かかります。
8 切開生検
針生検で診断がつかないとき、小さい病変なら、局所麻酔下に小切開を加えて丸ごと摘出する切開生検という方法もあります。外来で行える日帰り手術です。VABの登場で今ではすっかり減ってしまいましたが、VABにはない大きなメリットがあります。
①VABに比べて安価である
②術後のトラブル(血腫)がほとんどない
③病変を細分化せず丸ごと摘出
切開生検では直視下に確実な止血ができるため、生検後に大きな血腫を作るリスクはVABより少ないです。傷は1~2年すればほとんどわからなくなりますので、それほどのハンデになりません。
また、病変を細分化せず丸ごと摘出するので、病理検査において病変の全体像を観察することができます。浸潤癌か非浸潤癌かの診断精度も上がりますし、微小な病変だと取りきれてそうかどうかの目安にもなります。旧い方法ですが捨てたものではありません。
病院勤務のときはよく切開生検をしておりましたが、クリニックでは手術設備がありませんので今はVABを使っています。
9 生検後の経過観察
生検で乳癌と診断された場合は治療施設を紹介いたします(→§8)。生検で良性と診断された場合でも、しばらくは当院で経過観察をしていきます。細胞診や針生検の正診率は100%ではないからです。
当初は3ヶ月から6ヶ月、問題なければ半年から1年と間隔を広げて観察していきます。経過観察は保険診療で行います。超音波検査での観察が主体となりますが、石灰化病変はマンモグラフィでの観察になります。石灰化病変でなければマンモグラフィは基本的に1年ごと、細胞診や針生検は、再検査が必要になったときだけ行います。当院で経過観察している間は、検診やドックで乳房検査をする必要はありません。