乳房に「しこりがある」「痛みが続く」「乳頭から分泌がある」などの変化を感じたとき、心配になる方は多いと思います。多くの場合は良性の変化ですが、なかにはしっかりと検査や治療が必要なケースもあります。今日は、そんな乳腺の病気について少し詳しくお話ししたいと思います。
まずよく見られるのが「乳腺炎」です。授乳期に多く、母乳がうまく排出されないことが原因で起こります。赤く腫れたり、熱を持ったり、痛みを伴うこともあります。軽い場合はマッサージや授乳の工夫で改善しますが、細菌感染を起こすと抗生物質や切開排膿が必要になることもあります。授乳期以外でも「乳輪下膿瘍」や「肉芽腫性乳腺炎」といったタイプがあり、再発を繰り返すこともあるため、慎重な経過観察が大切です。
次に「乳腺症」という言葉を聞いたことがある方も多いかもしれません。これはホルモンバランスの変化によって乳腺が張ったり、痛んだりする状態です。月経周期と関係して症状が出たり消えたりすることが多く、基本的には心配のいらない生理的な変化です。ただ、痛みが強い場合は鎮痛薬やホルモンの調整で改善を図ることもあります。
「嚢胞(のうほう)」は乳腺内に液体の袋ができる状態で、エコー検査でよく見つかります。多くは良性で、放置しても問題ありませんが、張りや痛みがあるときは注射で液を抜くと楽になります。閉経後には自然に小さくなることがほとんどです。
また、「乳管内乳頭腫」という良性腫瘍もあります。乳管の中に小さなポリープのようなものができ、透明や血の混じった分泌が出ることがあります。ほとんどは良性ですが、まれに近くに乳がんを伴う場合もあるため、分泌が続くときは検査をおすすめします。
若い女性に多いのが「線維腺腫」です。弾力があり、コロコロと動くしこりとして触れることがあります。多くは良性で経過観察のみで問題ありませんが、短期間で大きくなったり、形が不整になった場合は切除を検討します。
これに似たもので「葉状腫瘍」という病気もあります。見た目は線維腺腫に似ていますが、増大が早く、良性から悪性まで幅があります。診断と治療を兼ねて手術で切除し、病理検査で確定診断を行うことが一般的です。
乳頭や乳輪にかゆみやただれが出る場合は「乳頭炎」や「乳輪炎」が考えられます。多くは炎症や湿疹で、塗り薬で良くなりますが、なかなか治らないときは「パジェット病」という特殊な乳がんの一種の可能性もあるため、早めに受診しましょう。
このほか、「副乳」といってわきの下などに余分な乳腺がある方や、男性に起こる「女性化乳房」などもあります。いずれも命に関わるものではありませんが、見た目や違和感で気になる場合は相談することで安心できます。
乳腺のトラブルは、痛みやしこりのほかにも、左右差や張り感、分泌物など、さまざまな形で現れます。「これくらいなら大丈夫」と思っても、実際に診てみると意外な病気が隠れていることもあります。特に、しこりが急に大きくなったり、乳頭から血が混じった分泌がある場合は、早めの受診が大切です。
当クリニックでは、超音波検査やマンモグラフィ、必要に応じて細胞診・生検などを行い、ひとりひとりに合った診断と治療を行っています。女性医師・スタッフによる丁寧な対応で、安心してご相談いただける環境を整えています。
乳腺の不調は、体のサインであると同時に、ホルモンや生活リズムの変化を映し出す鏡でもあります。痛みや違和感を感じたときは我慢せず、どうぞお気軽にご相談ください。早めの診察が、安心への第一歩になります。