【このページは、診療案内§6,7,8のダイジェストです。詳細はそちらをご参照下さい。】
乳腺は、女性ホルモンの影響を受ける組織ですから、月経周期によって張りや痛みが出やすい組織です。乳房の痛みは乳癌とは関係ないことが多いのですが、乳癌を否定することもできませんので、気になる方は乳腺外来を受診してください。一方、乳房のしこり、乳頭分泌、皮膚の変化などは、乳癌の発見につながることもあります。痛みがないからと様子見は禁物です。お早めに乳腺外来を受診してください。
乳癌とは
乳癌は乳腺に発生する悪性腫瘍で、女性が罹感する癌の第一位です。しかし早期発見すればよく治る癌でもあります。ここ20年で急速に増加し、今や女性の9人に1人がかかる疾患となっています。そして年齢分布にも大きな変化が表れています。以前は40代がピークでした。ここ20年で40代の乳癌も倍増しているのですが、60代、70代の増加がそれを上回り、その年代がピークとなっています。

乳癌は進行すると乳房だけでなく、リンパ節や骨、肺、肝臓などへ広がる可能性があります、しかもこの転移は最初のうちは小さ過ぎて画像検査では検出できず、術後数年〜10年、あるいはそれ以上経ってからやっと明らかになるのです! 手術で癌を取り除いたのにあとから転移が出てくるというのは不思議な感じがしますが、転移の源は乳房にできた癌しかないので、この転移の始まりは意外にも手術の前ということになります。ですから転移をさせないためには、なるべく早期に発見して手術することと、適切な全身治療を加える(薬物療法)ことが重要です。手術は転移の源を取り除くため、薬物療法は万が一全身に散った細胞があると困るので、それをやっつけるのが目的です。火事に例えれば、火元の消火と、火の粉による延焼の制御です。実際、病期Ⅰで治療した多くの方は根治しています。
乳癌の原因
乳癌に限らず、癌の原因ははっきりわかっていません。細胞分裂の過程で異常な細胞が生じ、免疫系による抑制ができなくなって、増殖すると考えられます。
乳癌の危険因子
乳癌の原因とは違うのですが、こういう人がかかりやすいという因子ならいくつかあります。
初経が早い、閉経が遅い、
妊娠出産歴がない、初産年齢が遅い、
閉経後の肥満、糖尿病、喫煙、
過度の飲酒、家族歴、乳癌の既往などです
家族歴につきまして、乳癌の90%以上は遺伝とは関係ない単発のものです、家族性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)のように遺伝と関連するものは乳癌全体の5~10%程度に過ぎません。HBOCにはBRCA1やBRCA2と呼ばれる遺伝子の変異が関係します。
乳癌の主な症状
乳癌で多くみられる症状は、乳房のしこりです。痛みや違和感はないことが多いです。大きくなってくると乳房の皮膚がくぼむ、引きつれる、乳頭の形が変わる、腋の下のリンパ節が腫れるといった症状が現れることがあります。
乳頭異常分泌の大部分は乳腺症など良性の変化ですが、ときに乳癌で生じることもあります。血性だと乳癌の可能性が高くなります。乳頭の先端が円形に丸くただれているものは、パジェット病という特殊な乳癌の可能性があります。痛みや痒みはないことが多いです。稀に炎症性乳癌と言って、しこりを伴わず皮膚が赤くなるタイプの乳癌もあります。見た目は乳腺炎と似ていますが、痛みや腫れを伴わないのが特徴です。見た目だけで判断せず、すぐに受診するようにしましょう。
非浸潤癌と浸潤癌
乳癌は、癌細胞が乳管内部にとどまっている段階の非浸潤癌(病期0)と、周囲の組織へ広がった状態の浸潤癌(病期Ⅰ~Ⅲ)に分けられます。浸潤癌になると、血管やリンパ管を介してほかの部位へ転移する可能性がでてきます。
進行度は、腫瘍の大きさやリンパ節への転移、離れた臓器への転移の有無などをもとに判断します。
乳癌の検査
乳房で気になるところがある場合は、問診や視触診を行った上で、マンモグラフィや乳房超音波検査を行います。マンモグラフィは小さな石灰化を確認しやすく、超音波検査はしこりの形や内部の状態を確認するのが得意です。
画像検査で乳癌が疑われる場合は、針を使って細胞や組織を採取し、病理検査で詳しく調べます。乳癌と診断された後は、MRIやCTなどを行い、病変の広がりや転移の有無を確認します。
乳癌の治療
乳癌の主な治療には、手術、放射線治療、薬物療法があります。乳癌は、ホルモン受容体やHER2タンパクの発現具合によっていくつかのタイプにわかれ、それぞれのタイプで治療方針が異なります。⚫︎悪性度の低いタイプは手術先行となることが多く、手術後の病理検査や遺伝子検査の結果を待って術後の薬物療法を決定します。⚫︎悪性度の高いタイプは薬物療法を行なってから手術になることが多いです。
⚫︎手術では、乳腺の一部を切除する方法(温存手術)と、乳房全体を切除する方法(乳房切除術)があり、病変の位置や広がり、本人の希望を踏まえて選択します。⚫︎腋の下のリンパ節は、昔は全部摘出する方法(腋窩郭清)が普通でしたが、現在は数個とって調べる方法(センチネルリンパ節生検)が主流となり負担が少なくなっています。⚫︎薬物療法には、ホルモン療法や化学療法、抗HER2療法、免疫療法などがあります。乳癌の種類や進行度、年齢、体調などを確認しながら、必要な治療を組み合わせます。⚫︎術後の放射線治療は手術が終わって落ち着いた頃に始めることが多いです。毎日の通院が必要ですが一回の照射時間は短く、副作用は照射部の皮膚がメインです。
乳癌の予防と検診
乳癌を完全に防ぐ方法はありませんが、生活習慣を整えることは発症リスクを抑えるために役立ちます。飲酒を控える、適度な運動を続ける、閉経後の体重増加を防ぐことなどを、日常生活に取り入れていきましょう。
また、日頃から乳房の形や触れたときの感覚を意識しておくと、小さな変化にも気づきやすくなります。しこりや乳頭分泌、わきの下のしこり、皮膚の変化がある場合は早めに受診しましょう。症状がない場合も定期的に乳がん検診を受けることが大切です。