先日、診察中にそんな質問を受けました。この方の乳癌のタイプは女性ホルモンに反応するルミナル型、術後5年を過ぎ、再発予防のためのホルモン剤を内服しておられる患者さまです。
ホルモン剤も癌細胞を殺しますよ。ホルモン剤が本格的に威力を発揮するときは抗癌剤となんら変わらず癌細胞を破壊します。攻撃的なイメージの抗癌剤に対して、マイルドなイメージのホルモン剤ですが、当たればとんでもない威力を発揮します。
最近経験した別の方の写真を患者さまの許可を得て呈示します。胸膜転移を有するステージ4の患者さまで、CDK4/6阻害剤を使わない、ホルモン単剤の効果です。

このように短期間に腫瘍が縮小するのは、癌細胞が破壊されているからにほかありません。これほど劇的に効くのはそう多くはありませんが、珍しいことでもありません。
それに、ホルモン剤が本格的に効くと血中の腫瘍マーカーが一時的に高くなり、それから下がっていく現象(フレア現象)がみられます。これは、癌細胞の中で作られている腫瘍マーカーが、大量の細胞破壊によって一気に血中に放出されて起こる現象で、ホルモン剤が癌細胞を破壊している証拠と言えます。この方の場合も一月後の採血で腫瘍マーカーが急増し、それから低下に向かいました。
抑えるだけに見えるのは・・・
①ルミナル型は大人しいタイプで、再発までの期間が長く、10年過ぎてから再発することも少なくありません。ちょうどホルモン剤を終了したあとのタイミングで再発するとそういう印象を持ってしまうのかと思います。
②ホルモン剤の作用機序が、女性ホルモンの受容体や産生をブロックして増殖を抑えるという、ちょっと遠回りな感じがすること。ブロックするだけでなくアポトーシス(細胞の自爆みたいなもの)を誘導するとも説明されていますが、それでもなんとなくマイルドなイメージを持ってしまいます。でも実際は呈示した症例のように、結構激しく細胞を破壊するのです。
ルミナル型は油断禁物
ホルモン剤を飲んでる患者さまに「これ役に立っているんですか」と尋ねられることも多いです。これもいずれお話したいと思いますが、ルミナル型は、抗癌剤よりも、むしろホルモン剤の方がよく効くくらいです。もちろん抗癌剤が効かないと言ってるわけではありませんので念の為。
しかも、ルミナル型は晩期再発が結構あり10年では安心できません。ルミナルAとルミナルBで多少の違いはあるのですが、10年過ぎてからも再発は増えていきます。3~5年で再発が出尽くしてしまうトリプルネガティブや、10年以降はほとんど再発しないHER2タイプと違って、油断は禁物です。特に乳房再発や腋窩リンパ節再発は、早く見つけて治療すれば根治できる再発なので、10年過ぎてからもフォローアップとセルフチェックは必要です。